第18話・2026.09.29
お金持ちになりたい理由を聞いたら、「楽したい」でした。
少女即答伝説。——なお、先生の答えは長かった。

私「お金持ちになりたいじゃないですか。何のためになりたいんですか?」
JK「楽したい」
即答だった。
さすが、楽をするために728行の仕様書を書いた人である(第6話参照)。
JK「なんか、お金を気にして過ごしたくないから、お金持ちになりたい」
第5話で「お金を気にせず生活できる人」を目指した彼女の答えは、ここでもまったくぶれていない。
では、その「楽」の正体は何なのか。
お金持ちになりたい、本当の理由
私「お金持ちになりたい本当の理由って、幸せになるためなんです」
橘玲さんの『幸福の資本論』という本がある。幸せは3つの資本でできている、という考え方の本だ。
1つ目は金融資産。お金のこと。壁と玄関の紙は、ぜんぶこれの話だった。
2つ目は社会資本。人とのつながり。
お金をたくさん持っていても、無人島にひとりでは寂しい。
札束は、無人島では焚き火くらいにしか使えない。
家族や友達がいて、人から「ありがとう」と言われて、はじめて幸せは手に入る。
3つ目は人的資本。稼ぐ力。
この3つがそれなりに高いと、人はかなり幸せでいられる——というのが本の主張だ。
そこに私は、本には書いていない4つ目を足した。全部の土台は、健康である。
この一行は先生の独断での追加です。念のため。
40代になると、この独断には年々自信がついてくる。

宿題は「立ち読みで確認しといてください」。
宿題が立ち読み。われながら安上がりな講座である。
本屋さん、ごめんなさい。
稼げるようになったら、買ってもらいます。
お金がなくても、怖くない人
3つの中で、私がいちばん伝えたかったのは人的資本だった。
めちゃめちゃ仕事ができる人は、稼ぐ力がある。
だから、お金がなくても全然怖くない。
貯金が減ったらどうしよう、と怯えなくていい。また稼げるからだ。
そして彼女のアプリ開発は、まさにここにあたる。
私「10日前くらいまで、アプリ全然作れなかったじゃないですか。でも今は作れる。そこでもう、稼ぐ力を得たんです」
JK「おお」

売上はまだ0円。金融資産は1円も増えていない。
でも人的資本は、もう増えている。
ここから先は順番の話だ。
その稼ぐ力を使ってお金を稼ぐ(金融資産)。
稼ぐ力を使って人の役に立ち、感謝されて、つながりができる(社会資本)。
3つの資本を知っていると、「今から何をやればいいんだろう」に迷わなくなる。
実は、雑談だった
さて、ここまで立派な話をしておいて、白状しておくことがある。
話し終えた私は、自分でこう締めた。
私「……雑談でした。また、これ送っときます」
そしてパソコンの画面をのぞいて、言った。
私「で、そろそろできましたね」
実は、AIの作業が終わるのを待つ間に、このお金の話をしていた。
AIが文章を1本書き上げるまでの数分で、先生は人生の幸せの話を一周していた。今回の主役は、AIではなく待ち時間の方である。

授業の予定表には載っていない、待ち時間のお金の雑談。
それが、この連載で「お金持ちになりたい理由」にいちばん深く触れた回になった。
「お金を気にして過ごしたくない」。彼女の「楽したい」の正体は、たぶん貯金の額だけでは手に入らない。
お金がなくても怖くない力とセットになって、はじめて手に入る。
第16話の最後に、私は「ただ、まだ1円も稼いでいない」と書いた。あれは金融資産の話である。資本は、3つある。
貯金ゼロでも、資産が増えている人はいる。
(第18話・了)
この連載は、実在する女子高生の学習過程を、本人・保護者の同意のもと個人が特定されない形で記録しています。会話は意味を変えない範囲で整理しています。