第17話・2026.09.26
AIが、嘘を1個書きました。
少女検品伝説。——なお、嘘をついたのはAIである。

この日の授業の後半は、アプリではなく文章だった。
作ったものの話を、文章にして人に伝える練習である。作る人は、伝える人でもある。それに、書く力はアプリと違ってAIの無料枠を気にせず使える。
やり方は、もう授業でおなじみの型だ。
AIに丸投げ——ではなく、AIに質問させる。
書きたいことを伝えると、AIが質問を投げてくる。それに答えていくと、答えた内容から下書きが組み上がる。728行の仕様書を作ったとき(第7話)と、まったく同じ構図である。書くのはAI、中身を決めるのは人間。
彼女は質問の列に、5分ほどで答えきった。下書きが生成される。
JK「結構いい感じ」
お、順調だ。と思ったら、彼女が画面を見ながら言った。
JK「なんか1個、嘘書かれてます」
私「出た。」
AI業界ではこれを「ハルシネーション(幻覚)」と呼ぶ。ずいぶん幻想的な名前がついているが、書かれた側から見れば、ただの捏造である。
生成された下書きの中に、身に覚えのないエピソードがひとつ混ざっていたのだ。AIは、こういうことを平気でやる。それらしい文章の中に、それらしい嘘を、それらしく織り込んでくる。
面白いのはここからで、彼女は嘘を見つけただけでなく、原因まで特定した。
JK「あっちが提案してきた質問に、答えるの忘れてて。例に書かれてたやつが、そのまま書かれちゃったみたいです」
私「中々、クロヤンやるな」
クロヤン「恐縮です」
JK・私「ほめてない」
クロヤン「すみません・・・💦」
※クロヤン(実装担当のAI・第11話参照)
つまりこうだ。AIの質問には答えの例文がついていた。彼女が答え忘れた質問について、AIは「回答なし」とは書かず、例文をそのまま本人の答えとして採用した。空欄を、勝手に埋めたのである。
テストの空欄を白紙で出さない根性だけは、受験生の鑑である。中身が捏造でなければ。

AIと文章を書くときの最重要ルールが、期せずして最初の1本目で学べてしまった。
AIは、空欄を嘘で埋める。埋まった嘘に気づけるのは、本人だけ。
だから、AIが書いた文章は、事実を知っている人間が必ず検品する。逆に言えば、検品さえすれば、AIとの共同執筆はとても速い。彼女は嘘を直させて、下書きを仕上げた。
ついでにもうひとつ、初歩の質問が良かった。
「シャープって、どういう時に使うんですか?」
もらった下書きに「#」や「**」がたくさん入っていたのだ。あれはマークダウンという書式で、#は見出し、**で囲むと太字。AIと仕事をすると、こういう裏方の記号にも自然に出会うことになる。
ちなみにAIは、頼まなくても見出しをつけ、太字にしたがる。張り切った新入社員だと思えば、かわいいものである。議事録さえ盛らなければ。

書く練習の初日にして、AIの嘘を1個見破り、原因を特定し、記号の意味を1個覚えた。
ちなみにこの連載も、公開前に毎回、事実確認をしている。以前、私が下書きに「2週間前」と書いて、数え直したら実際は数日だったことがある。嘘をつくのはAIだけではない。人間の記憶も、けっこう盛る。

事実だけが、確認に耐える。
(第17話・了)
この連載は、実在する女子高生の学習過程を、本人・保護者の同意のもと個人が特定されない形で記録しています。会話は意味を変えない範囲で整理しています。