第16話・2026.09.19
「海外旅行行きたい」の値段は、1500万円でした。
少女階段伝説。——なお、彼女はまだ一段目の手前にいる。

私「お金持ちになったら、どんな自由が欲しいです?」
アプリのテストがひと段落した夜、私は彼女に聞いてみた。即答だった。
JK「海外旅行行きたい」
いいだろう。では、その夢に値札をつけよう。
夢の値札は?
『ウェルスラダー』という本がある。資産の額に応じて、人生の自由が階段のように増えていく——という整理をした本だ。
いちばん下は、毎日の生活を回すだけで精一杯の段。
少し貯まると、スーパーでお菓子をカゴに入れるのに値札を見なくなる。食料品の自由だ。
その上が、好きなレストランにたまに行ける外食の自由。
そして彼女の言う「旅行の自由」は、階段の真ん中あたりにある。
日本円にして、だいたい1500万円から1億5000万円。
振れ幅は「国内日帰り旅行」から「海外旅行」の自由に相当していると考えてもらっていい。

なぜそんな金額になるのか。ここで、トイレに貼ってあるあの紙が効いてくる。4%ルールだ(第8話参照)。
資産があり、適切な運用先にいれておけば、年4%の運用益が勝手に生まれる。
その運用益の範囲で旅行に行けば、元本は減らない。つまり「旅行の自由」とは、貯金を切り崩して行く旅行ではなく、資産が生む利子だけでハワイに行ける状態のことを言う。
ハワイは厳しい
ちなみにハワイ、家族で行くと一撃100万円級である。飛行機代が1人20万円。1人では多分行かない。家族の人数を掛ける。ホテルに泊まる。はい100万円。
JK「確かに・・・全然いきそう」
私「ただ、ハワイだと一撃100万円なので、2回目は厳しい」
JK「確かに・・・ゴクリっ!」

彼女は素直に納得した。そして、自分の言葉でまとめた。
JK「じゃ、旅行行きたければ、1500万から1億5000万」
そのとおり。第5話で「頑張って、1300万円貯めます」と言って壁に紙を貼った彼女は、その目標が何のすぐ手前なのかを、この日初めて知ったことになる。
1300万円から少しで、旅行の自由の最初の段に手が届くのだ。
ただ、まだ1円も稼いでいない。
私は宿題を出した。
私「この階段の表、印刷して、玄関にでも貼っといてください」
JK「玄関」
彼女の家の紙は、これで4枚目になる。壁に2枚、トイレに1枚、そして玄関に1枚。家がだんだん、金融教育の展示場になっていく。
貼る場所には、いちおう理屈がある。毎日必ず通る場所に貼った紙は、読もうとしなくても目に入る。トイレの注意書きと同じだ——という話は、実はこの日の前半、彼女のアプリの説明文の話でしたばかりだった(第15話参照)。

アプリの説明文も、お金の階段も、届けたければ相手が必ず見る場所に置く。
作る話と、お金の話は、たまにこうやって同じ理屈で繋がる。
(第16話・了)
この連載は、実在する女子高生の学習過程を、本人・保護者の同意のもと個人が特定されない形で記録しています。会話は意味を変えない範囲で整理しています。投資に関する記述は学習用のモデルであり、特定の金融商品の推奨や将来の成果の保証ではありません。