第10話・2026.08.30
女子高生、インターネットに「家の鍵」を貼りそうになる。
少女危機一髪伝説。——なお、危なかったのは先生の心臓である。

私「ちゃ、チャットには入れたらダメだよ!」
嚙んだ。この連載で、私がいちばん慌てた瞬間の話である。
発端は、確認の一言だった
アプリの中でAIを使うには、APIキーという30数桁の文字列が要る。 Geminiを呼び出すための、いわば住所付きの家の鍵である。 使われた分だけ、持ち主に請求が来る。
その設定作業中、彼女は聞いた。
JK「これ、もうクロードコード(のチャット)に入力した方がいいですかね?」
鍵を、チャット欄に貼り付けていいか——という確認である。 貼る前に聞いた。えらい。そして、答えはダメである。
私「チャットには入れたらダメだよ。」
「チャットに入れると、AIのサーバーの中に行っちゃうんで。」
「インターネットの中のどこかに表示されちゃう可能性があるよ」
JK「ええっ……」
鍵の授業は、2回目だった
実は「鍵は見せない」の話は、これが初めてではない。
キーを発行した日、画面録画にキーが映り込んだ。私はその場で削除させて、 「あとで自分で、こっそり作り直しといてください」と頼んだ。
映っただけで作り直す。それくらい徹底する場所なのだ。

チャットも同じである。アプリの設定ファイルは自分のPCの中で完結するが、 チャットに書いたことはAIのサーバーへ送られる。鍵は、家の外に出さない。
ちなみにこれは、AIを使う大人にもそのまま効く。パスワードや社外秘を AIチャットに貼るのは、家の鍵をネットに置くのと同じである。
で、どうしたか
正解は「アプリに、鍵置き場を作る」である。
画面のスクショを撮って、Claude Code にこう頼んだ。
『未設定』のボタンを押したらAPIキーの入力画面になって、 貼り付けたら環境変数に設定されるようにしてください
数分後、設定画面ができた。画面を再読み込みして、キーを貼る。
表示が「設定済み」に変わる。
JK「すごっ!」

かくして彼女のアプリには、鍵を安全にしまう場所ができた。 チャットに貼られそうになった鍵は、貼るための正しい場所を得たのである。
なぜ、この話を1話使ってしたのか
次回、このアプリはインターネットに公開される。 URLを知っていれば、誰でも使える状態になる。
公開とは、アプリの扉を外に向けることだ。 だからその前に、鍵の話をしておきたかった。

ついでに白状すると、危機一髪だったのは彼女ではなく、私の心臓である。 彼女は貼る前に、ちゃんと聞いた。慌てたのは、先生だけだった。
扉を開ける準備は、できた。
その話は、次回。
この連載は、実在する女子高生の学習過程を、本人・保護者の同意のもと個人が特定されない形で記録しています。会話は意味を変えない範囲で整理しています。
(第10話・了)