第11話・2026.09.01
手書きの紙4枚が、たった5日でインターネットに公開された。
少女公開伝説。——なお、鍵はかけてある。

彼女のアプリは、今夜から——彼女が寝ている間も、動いている。
手書きの紙4枚から、わずか5日後の夜のことである。
「スマホで使いたいんですけど」
伏線は、公開の前々日にあった。
アプリがだいぶ形になってきた日、彼女はスマホを手にして言った。
JK「これ、スマホに共有して……」
「え、これ、パソコンじゃないとできないですかね?」
私「今はパソコンのサーバー上で動いてるからね。」
「Webで公開されるようになったら、URLを共有すれば」
作ったアプリを、自分のスマホで使いたい。当たり前の願いである。
そして、**それを叶える方法が、「公開」**だ。
第3回の授業で、こんな話をしていた。
いま動いている「localhost:3000」は パソコンの中に作った仮想のパソコンで、ここで動くということは、
インターネット上のサーバーに移植しても動くということ——
JK「すごっ!」
今日は、それを本当にやる日である。
まず、「前に戻れる仕組み」を作る
公開の前に、やることがひとつある。
GitHub——コードをクラウドで預かってくれて、 何かあっても前の状態に戻れる場所だ。
アカウントを作り、リポジトリ(アプリの置き場所)を作る。
もちろん非公開設定(プライベート)で、 APIキーのような機密は除外設定にして、そもそもアップロードされないようにする。
鍵は、クラウドにも出さない。先週チャットに貼りそうになったあの鍵の話は、 ここまでが1セットである。
この日、彼女は初めて「黒い画面(ターミナル)」も触った。
マウスでボタンを押す代わりに、 文字の命令で操作するやつだ。
8桁のコードをブラウザに打ち込んで認証が通ると、 アプリの置き場所ができていた。
デプロイ——「全部英語じゃん」
次に、Vercel。
「パソコンの中の仮想PC」で動いていたアプリを、 インターネット上のサーバーへ移植するサービスである。
アカウントを作り、さっきの置き場所を接続すると、 デプロイ(公開のための処理)が走り出す。画面は容赦なく英語だ。
JK「分からない。全部英語じゃん。……お、あ、できたっぽい」
できたっぽい。IT業界では、これを本番リリースと呼ぶ。
画面には、URLが生まれていた。
世界のどこからでもアクセスできる、彼女のアプリの住所である。

正直に書くと、ここまで一本道だったわけではない。
途中、設定画面が なぜか「有料プランにアップグレードせよ」と言い出す謎のエラーがあった。
JK「何か、有料プランにせよっていってくるんですが」
私「ClaudeCodeにスクショ撮って聞いてみたら」
JK「何か、有料プランにせよっていってくるんだけど・・新しい詐欺ですか?」
クロヤン「ちょっと待ってください調べます・・・・。」
「・・・すっ、すみません。」
「私がアカウントを取り違えていたみたいです」
調べたらアカウントの取り違えが原因だった。
公開作業とは、 こういう小さな謎解きの連続である。
※クロヤンは、彼女が Claude Code につけた呼び名である。
スマホで、開いた
生まれたURLを、自分のスマホに送る。
JK「あ、できた。できました」
手書きの紙4枚から始まったアプリが、彼女のスマホの中で動いた。
第3回の授業で「移植すれば誰でも使える」と聞いて
「すごっ!」と言っていた、 あれが現実になった瞬間である。
最後に、扉に鍵をかけた。
URLを知っていて、さらにパスワードを知っている人だけが 入れる設定である。誰でも使える状態を作ってから、誰が使えるかを自分で決める。
公開とは、全開にすることではない。
公開の前日に、していた話
実はこの前日、お金の授業で「フロー収入とストック収入」という話をしていた。
中身は次のお金の回に取っておくが、要点はひとつ。
働いて時間をお金に変える以外に、作った仕組みが代わりに稼いでくれる道がある——という話である。
公開されたアプリは、まだ1円も稼いでいない。
値段もついていないし、使えるのは今のところ、パスワードを知っているごく数人だけだ。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
このアプリはもう、彼女の時間を使わずに動く。
彼女が学校にいる間も、寝ている間も、URLを知っている誰かがアクセスすれば、 写真を読み取って、勉強の計画を作る。
先生より、働き者である。

**2年間「お金持ちになりたい」**と言い続けていた彼女は、
たった5日で、初めての「仕組み」を手に入れたことになる。
面談で話した「お金持ちになる3つの道」の1本目——自分の能力で稼ぐ——に、 「仕組みが働く」という翼が付いた。
売れるかどうかは、まだ分からない
先に断っておくと、この仕組みが売れるかどうかは分からない。
売れなくても、この企画は失敗ではない(それは最初から決めてある)。
ただ、手書きの紙4枚から始まった頭の中が、
質問23個を経て、728行になり、数日で動くアプリになり、
5日目の今日、世界中からアクセスできる場所に置かれた。
次は——「次のお金の回に取っておく」と書いた、あの話である。
時間を売るか、仕組みに働いてもらうか。
その話は、次回。

この連載は、実在する女子高生の学習過程を、本人・保護者の同意のもと個人が特定されない形で記録しています。会話は意味を変えない範囲で整理しています。
(第11話・了)