第14話・2026.10.28
年金は、請求しないと1円も振り込まれない。給付金は、遅れた月の分が戻らない

老後のお金を「月いくら」に直す(14)
65歳になっても、年金は自動では振り込まれません。
誕生日の3か月前に届く「年金請求書」を出して、はじめて始まります。
年金は、請求が遅れても5年分まではさかのぼって受け取れます(71歳で請求して、約976万円を一括で受け取る例もあります)。
でも、年金生活者支援給付金は違います。請求が1年遅れると、その1年分、最大で約6万7千円は戻ってきません。
Threadsでこの話を書いたら、いちばん多かったのは「妹が申請していないので連絡してみる」のような、家族に知らせる声でした。
65歳前後の家族がいる人も、読んだら送ってあげてください。今回は、請求しないと始まらないお金を3つ、式で直します。

根拠が要らない人は、各式の「自分の数字を入れる」だけ読めば足ります。
式1 年金の月額 × 遅れた月数 = あとからまとめて受け取れる額(5年まで)
年金の月額 × 請求が遅れた月数 = あとからまとめて受け取れる額(ただし5年を過ぎた分は時効)
根拠
年金は、受け取れる年齢になっても、請求書を出すまで振り込まれません(日本年金機構「老齢年金の請求手続きの流れ」)。
請求書は、受け取り始める年齢の3か月前に届きます。名前や加入の記録はもう印字されていて、誕生日の前日から出せます。
請求が遅れても、5年分まではさかのぼって受け取れます。5年を過ぎた分は、時効で受け取れなくなることがあります(日本年金機構「年金の時効」)。
例(65歳からの年金が月15万円の人)
請求が1年遅れた:15万円 × 12か月 = 180万円を、あとからまとめて受け取る
70歳を過ぎてから請求した人には、2023年4月から救いの仕組みがあります。さかのぼって受け取るとき、「請求の5年前に繰り下げを申し出た」とみなして、増えた額で5年分を受け取れます(特例的な繰下げみなし増額)。
71歳で請求した:66歳で繰り下げたとみなして 8.4%増 → 月16万2,600円 × 60か月 = 約976万円を一括で
ただし、80歳を過ぎてからの請求は対象外です。そして65歳から71歳までの6年のうち、最初の1年分は戻りません。
自分の数字を入れる
年金の月額__円 × 遅れた月数__か月(最大60か月)= __円
式2 月5,620円 × 遅れた月数 = 戻ってこない給付金
年金生活者支援給付金の月額 × 請求が遅れた月数 = 受け取れなくなる額
根拠
年金生活者支援給付金は、年金が少なめの人に、年金に上乗せして払われるお金です。2026年度の基準の額は月5,620円です。
ただし、誰でも受け取れるわけではありません。
- 65歳以上で、老齢基礎年金を受け取っている
- 世帯の全員が、住民税が非課税
- 前の年の年金とほかの所得の合計が、80万9千円以下。
90万9千円以下までは、少し減った額の給付金が出ます
月5,620円は、国民年金を40年(480か月)納めた人の額です。30年なら月4,215円のように、納めた月数で変わります(日本年金機構 FAQ)。
そして、この給付金は 請求した月の翌月分から です。年金を受け取れるようになってから3か月以内に請求すれば、さかのぼって受け取れます。3か月を過ぎると、遅れた分は戻りません(日本年金機構 FAQ)。
年金は5年さかのぼれるのに、給付金はさかのぼれない。ここがいちばんの落とし穴です。
例(40年納めた人)
請求が1年遅れた:5,620円 × 12か月 = 6万7,440円が戻らない
対象になる人には、請求書(はがきの形のものもあります)が届きます。届いたら出す。それだけで、この6万7千円は守れます。
自分の数字を入れる
5,620円 × 納めた月数__か月 ÷ 480 = 自分の月額__円
自分の月額__円 × 遅れた月数__か月 = 戻らない額__円
式3 加給年金 年42万3,700円 × 配偶者が65歳になるまでの年数 = 届け出で受け取れる額
年42万3,700円 × 年下の配偶者が65歳になるまでの年数 = 加給年金で受け取れる額
根拠
厚生年金に20年以上入っていた人が65歳になったとき、生計を一緒にしている65歳未満の配偶者がいると、年金に「加給年金」が上乗せされます。2026年度は、配偶者の分と特別加算で年42万3,700円、月にすると約3万5千円です(日本年金機構「加給年金額と振替加算」)。
これも、届け出が必要です。年金請求書と一緒に、生計を一緒にしていることがわかる書類を出します。配偶者が65歳になると終わります。
例(妻が3歳年下の場合)
42万3,700円 × 3年 = 約127万円
#09 で書いたとおり、年金を繰り下げて待っている間は、加給年金は受け取れません。待つかどうかを決める前に、この額を計算に入れてください。

自分の数字を入れる
42万3,700円 × 配偶者が65歳になるまで__年 = __円
会社の年金も、請求しないと出ない
国の年金だけではありません。昔の会社の企業年金(厚生年金基金など)にも、まだ請求していない人が約106万人います(2024年度末・厚生労働省の資料)。受け取れる人の約8%です。
おもな理由は、引っ越しで案内が届かないことです。転職が多かった人、昔の会社の名前を思い出せる人は、企業年金連合会か、昔の会社の年金基金に問い合わせてみてください。
読者の声
Threadsでは、こんな声が届きました。
- 妹が申請していないので、連絡してみる
- 申請を忘れていたので、年金事務所に聞いてみる
- 面倒くさいから、案内が届いた時にもらった
- 繰り上げの手続きは、年金事務所でした
- 通知が来ない人は対象外? 何もしないと、くれないですよね
- 70歳くらいの妹が、年金をそのままほったらかしにしている
冒頭に書いたとおり、いちばん多かったのは、自分ではなく家族に知らせる声でした。
請求の前に知っておくこと
- 専業主婦(主夫)だった期間がある人も、自分の年金は自分で請求します
- 繰り上げ・繰り下げを考えている人は、請求書を出す前に年金事務所で相談してください。繰り下げるなら、請求書を出さずに待つか、受け取る時期の欄で選びます
- 引っ越し・結婚で名前や住所が変わった人は、請求書が届かないことがあります。65歳の3か月前になっても届かなければ、年金事務所へ
自分の数字で、まとめて計算したい人へ
いまの収入と支出、資産、何歳まで働くかを入れると、「会社に縛られなくてよくなる年齢」が出る計算機を作りました(無料・1分)。
老後のお金の計算機
FIRE Strategy Lab | FIRE戦略シミュレーター
給付金・加給年金・付加年金など、「自分が対象か」「いくら増えるか」を1枚で確かめられるチェック表を準備しています。
書いた人
年金・節約・給付金を「いくら得する?」で分解しています。
Threads(@nagara_takumi)で毎日、大きな数字を「月いくら」に直しています。
投資歴22年・エンジニア歴20年の会社員です。
https://www.threads.com/@nagara_takumi
出典
- 日本年金機構「老齢年金の請求手続きの流れ」「年金請求書(事前送付用)」(請求書は3か月前に届く・請求しないと始まらない)
- 日本年金機構「年金の時効」(5年・国民年金法102条1項・厚生年金保険法92条1項)
- 日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました」(特例的な繰下げみなし増額)
- 日本年金機構 FAQ「手続きが遅れると年金生活者支援給付金は受け取れなくなりますか」・給付金の額の計算(令和8年度 月5,620円・所得の基準)
- 日本年金機構「加給年金額と振替加算」(令和8年度 年42万3,700円)
- 厚生労働省 企業年金の未請求者の状況(令和6年度末 106.1万人)
注意
- 年金の月15万円は例です。自分の額は、ねんきん定期便か請求書で確かめてください。
- 自分が対象か・いつから受け取れるかは、年金事務所か給付金専用ダイヤル(0570-05-4092)で確認してください。
- 学習用の計算です。将来の成果を保証するものではなく、特定の金融商品の推奨ではありません。
- 制度と統計の数字は変わります(この記事は2026年10月時点)。