第13話・2026.10.26
働いても、年金は月65万円まで1円も減らない。60歳で給料が下がった人には5年で144万円

老後のお金を「月いくら」に直す(13)
給料と厚生年金の合計が月65万円までなら、働いても年金は1円も止まりません(2026年4月から)。
それでも「働くと年金が減るから」と、働く時間を減らしている人がいます。
ただし、超えて止まった分は、あとから戻ってきません。繰り下げて待っていても増えません。
60代前半の男性は84%が働いています。60代後半でも63%、70代前半でも44.5%です。
働くかどうかより先に、働いたら年金がどう変わるかを知っておくと、働き方を自分で決められます。
今回は、止まる額・増える額・給料が下がったときに出るお金を、3つの式で直します。

根拠が要らない人は、各式の「自分の数字を入れる」だけ読めば足ります。
式1 1か月に止まる年金
(月の給料 + 月の厚生年金 − 65万円)÷ 2 = 1か月に止まる厚生年金
根拠
厚生年金に入って働きながら年金を受け取ると、給料(賞与を月にならした額を含む)と厚生年金の合計が基準を超えた分の半分が止まります。これが「在職老齢年金」です。基準は2026年4月から月65万円になりました(日本年金機構)。
止まるのは厚生年金だけです。国民年金(老齢基礎年金)は全額受け取れます。
例
給料40万円 + 厚生年金15万円 = 55万円 → 65万円より下なので、止まらない
給料55万円 + 厚生年金15万円 = 70万円 →(70万 − 65万)÷ 2 = 月2万5千円止まる
給料80万円 + 厚生年金15万円 = 95万円 →(95万 − 65万)÷ 2 = 15万円 = 厚生年金が全部止まる
返信で「71歳で働いていて、厚生年金が全額止まっています」と教えてくれた人がいました。3つ目の例のように、給料が年金より大きく上回ると、全部止まることがあります。
逆に言えば、多くの人は止まりません。給料40万円でも、厚生年金が25万円までなら0円です。
自分の数字を入れる
(給料__万円 + 厚生年金__万円 − 65万円)÷ 2 = 月__万円(マイナスなら0円)
式2 標準報酬 × 5.481/1000 × 働いた月数 = 年金が増える年額
平均の標準報酬(月の給料+賞与をならした額)× 5.481 ÷ 1000 × 働いた月数 = 年金が一生増える額(年額)
根拠
厚生年金は、払った月数のぶんだけ増えます。1か月あたりの増え方が「平均の標準報酬 × 5.481/1000」です(2003年4月以後の期間・日本年金機構)。
65歳から70歳までは、働いて納めた分が 毎年1回、10月分から 年金に足されます(在職定時改定・2022年4月から)。
65歳より前は足されません。会社をやめたときか、65歳になったときに、まとめて足されます。
例(65歳から、平均の標準報酬30万円で働く)
30万円 × 5.481/1000 × 12か月 = 年金は 年約2万円増える(翌年の10月分から)
70歳まで5年働くと:30万円 × 5.481/1000 × 60か月 = 年約9万9千円増える
返信で「65歳を過ぎて働いたのに、年金が上がっていなかった」という人がいました。調べると、厚生年金に入っていない働き方でした。増えるのは、厚生年金に入って働いた分だけです。
自分の数字を入れる
標準報酬__万円 × 5.481/1000 × __か月 = 年__円
式3 新しい給料 × 最大10% = 雇用保険から出る額
60歳以降の給料が60歳時点の75%未満に下がったら:新しい給料 × 最大10% = 毎月、雇用保険から出る額(65歳になるまで)
根拠
60歳以上65歳未満で、雇用保険に5年以上入っていた人が、給料が60歳時点の75%未満に下がって働き続けると「高年齢雇用継続給付」が出ます。
2025年4月1日以降に60歳になった人は、最大で新しい給料の10%です(それより前に60歳になった人は最大15%)。給料が60歳時点の64%以下まで下がると10%、64%から75%の間は少しずつ減ります(厚生労働省・ハローワーク)。
例(60歳時点の給料40万円 → 再雇用で24万円=60%)
24万円 × 10% = 月2万4千円
65歳まで5年続くと:2万4千円 × 60か月 = 144万円
申請は、ふつうは勤め先を通してハローワークに出します。勤め先が知らないこともあるので、再雇用の話が出たら自分から聞いてください。
自分の数字を入れる
新しい給料__万円 × 10% = 月__円(60歳時点の64%以下の場合)
3つの式を、60歳からの10年に並べる
- 60〜64歳:給料が下がったら 式3(雇用保険から最大10%)。年金を繰り上げて受け取りながら働くと、式1 の線もかかります
- 65〜69歳:式2 で毎年10月に年金が増える。給料が高い人は 式1 で一部止まる
- 70歳から:厚生年金の加入は終わり、増えるのは止まります。給料が高ければ 式1 の線は続きます

読者の声
Threadsでは、こんな声が届きました。
- 71歳で働いていて、厚生年金が全額止まっている
- 繰り上げて受け取って、70歳まで細く長く働く
- 66歳。70歳まで働いて、妻に残すお金を増やす
- 65歳までは会社に雇ってもらえるから、65歳から受け取るのが自然
- 69歳、仕事をしながら
- 何らかの形で、働ける限り働く。世の中とのつながりを続けるため
- 60歳で退職して、夫婦でヨーロッパを3か月旅した
働く理由は、お金だけではありません。60歳でやめて、時間を使う人もいます。
どちらを選んでも、式を知っていれば「働いたら損」と思い込んで時間を減らすことはなくなります。
働く前に知っておくこと
- 冒頭に書いたとおり、在職老齢年金で止まった分は戻りません。繰り下げて待っても、止まる分は増える対象になりません
- 在職定時改定で年金が増えるのは、厚生年金に入って働く人だけです(週の時間・給料などの条件があります)
- 60〜64歳で年金と高年齢雇用継続給付を両方受けると、年金がさらに一部止まります(2025年4月以降に60歳になった人は最大で標準報酬月額の4%・日本年金機構)
- 年金と給料が増えると、税金や保険料が増えることがあります。10 で手取りの計算をしました
- 65歳の誕生日の前々日までにやめるか、前日以降にやめるかで、雇用保険の給付(基本手当か一時金か)が変わります。やめる日はハローワークで確かめてから決めてください
自分の数字で、まとめて計算したい人へ
いまの収入と支出、資産、何歳まで働くかを入れると、「会社に縛られなくてよくなる年齢」が出る計算機を作りました(無料・1分)。
老後のお金の計算機
FIRE Strategy Lab | FIRE戦略シミュレーター
書いた人
年金・節約・給付金を「いくら得する?」で分解しています。
Threads(@nagara_takumi)で毎日、大きな数字を「月いくら」に直しています。
投資歴22年・エンジニア歴20年の会社員です。
https://www.threads.com/@nagara_takumi
出典
- 内閣府「令和8年版 高齢社会白書」(総務省 労働力調査 2025年平均・就業率)
- 日本年金機構「在職老齢年金」(令和8年度の支給停止調整額 65万円)
- 日本年金機構「令和4年4月からの制度改正」(在職定時改定)
- 日本年金機構「老齢厚生年金の受給要件・支給開始時期・年金額」(報酬比例部分 5.481/1000)
- 厚生労働省「令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します」・ハローワーク「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」
注意
- 計算は、給料・賞与・年金額を一定とした場合の目安です。標準報酬の上限・下限、高年齢雇用継続給付の上限額は省いています。
- 自分の年金が止まるか・いくら増えるかは年金事務所、高年齢雇用継続給付はハローワークで確認してください。
- 学習用の計算です。将来の成果を保証するものではなく、特定の金融商品の推奨ではありません。
- 制度と統計の数字は変わります(この記事は2026年10月時点)。